【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

エレベーターを使い、三階まで登りキノの一室の前で立ち止まる。


「あ、帰ってきてない、真さん」


「おじさん帰ってないの?」


「ま、鍵あるから平気だけど」


ポケットから鍵を取りだし人差し指に引っかけて私に見せると

キノは鍵を開けた。


「ただいまー」


返事のない部屋にキノは適当に靴を脱ぎ散らかして入っていった。

私も靴を揃えて中に入った。


自分の部屋に入っていったキノをリビングで待っていようと突っ立っていると

キノが部屋から首を出した。



「俺の部屋来る?」


「え」


「きたねえし狭いから入りたくなきゃいいけど」



なにそれ、ひどくない!?
選択権私に託すとか


入りたいとか言ったらなんだかその気みたいじゃん。
テレビも本棚もリビングにあるから今までおじさんとかがくつろいでる目の前でゲームしたりお菓子食べたりしてたから…



もしや

私、キノの部屋に入るの初めて!?


いや、その前に

入るの!?

いかがわしいことなんてこれっぽっちも考えてないけど

きょ、興味ないわけじゃないし




「じゃあ、ちょっと、見せて」


「どーぞ、あ、足元気をつけて」


爪先で足場を探しながら漫画やらよくわからないおもちゃをよける。


うん、汚ない


私よりは、汚ない


安全に座れるとこがなくて仕方なくベッドに腰をおろす。


「…タカさあ」


「なに」


「なんでベッド座っちゃった?」


意地悪そうな声に
私は勢いよく立ち上がった。


「あ、足場が、ないから!」


「そうね、そうですよね、じゃあ座っといて」


肩を押されて再びベッドに腰をおろす。

なんだかなー

キノは相変わらず余裕だ。

少しぐらいドキッとかないんですかこの人は。


どーせ何事もなく楽しくうだうだするのが目に浮かびますけど

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