【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

宝___5



あっという間に、
月日は過ぎていった。

なんてことない、代わり映えのない毎日だ。


朝はいつも同じ時間に起きて、ここに住む人全員で朝ごはんを食べて、
タカと学校に行って、友達と遊んで、アザミにケンカ売られて、適当に流して、
帰って、みんなで遊んで、飯食って、勉強して、

寝る。


毎日、毎日、

同じことの繰り返し。



なのに、



いつまでたっても、ひとつひとつが新鮮で、

今まで気にも止めなかった町行く人とか、店とか、空の色とか、

毎日、変わる世界の色に、

俺はいつもこそばゆい気分だった。



世界がこんなに美しいことを


俺は知らなかった。



会いたい人に、

いつでも会えるこの幸せが、



これからも、ずっと、永遠に、



続いていくような気がしていた。


幸せ過ぎて、忘れていた。


この幸せは、

期間限定であることに。







「みなさん、さよーなら!」


小さな頭をぺこりと下げて、パンパンのリュックを背負う女の子は満面の笑みを浮かべた。


「みーちゃん、いいねぇ、お父さんにお母さんできたんだね!」

「えへへ、そうなの、えへへ」


タカがその子の頭を優しく撫でてあげると、またさらにニコニコと笑った。


「キノ兄ちゃん!ばいばーい!」

「ばいばい、元気でね」


ひらひらと手を軽く振ると、何倍もの早さと大きさで返してくれた。

そうして、彼女の両脇から、お父さんとお母さんになるであろう人が小さな手を握り、深く頭を下げたあと、ゆっくりと家を出ていった。


幸せそうなその子の横顔を見たら、少し目がうるんだ。



「行ったねー」

「行ったな」

「やっぱり、寂しいね。あの子、まだちっちゃいからたぶん何にも分かってないだろうけど、」

「はは、」



身寄りのない、小さい子は、

よく、子供のいない夫婦にもらわれたりする。


もちろん、しっかりと手順は踏んでいる。


何度も面会をして、話し合って、
子供に不幸のないように、細心の注意を払って。


タカは、きっと今まで何人もの子供を見送ってきたんだろう。

彼女が見送られる側にならない理由、

聞かなくても、なんとなくわかる。



ここにいる子供たちは、タカよりも小さい子ばかりだ。

タカは面倒見がいいから、ずっと小さい子の世話をしてきたはずだ。

彼女がいなくなると、小さい子たちにも影響が出る。



だから、タカは自分の意思でここに居続けているんだ。




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