【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

そして、次の日。


いつものように学校に行った帰り、二人でいつもの公園に行った。

プレゼントを学校の鞄にしのばせて、
気づかれないように、平然を装って。


「もうあんまり来れなくなるから色々目に焼き付けときなよ」


「言われなくても」


「なにー?なんか、歯向かうようになったよね、キノ。ほら、もっと風景を見てさ」



今は、風景よりも、

タカを目に焼き付けたい。


いつでも会えると言っても、夏休みとか、長い連休がないと、なかなか会えないんだから、

しっかりと、焼き付ける。


彼女が居なくても、大丈夫だって、思えるように。


出会いがあるなら当然別れもある。

俺がここに居続けたとして、タカがほんとにずっと側になんて、ほんとはない。

彼女だっていつから自立して、俺の前から居なくなる。


俺もいつかは、当然自立して、


俺と、タカは、


いつかは、


お互いを、忘れるのかな。



「ついたついた。さーて、最後だけど、なにして遊ぶ?さすがにこの天気だとカエルさんいないだろなー」



嫌だ。


忘れるのも、忘れられるのも。





大丈夫だって、そう思ったのに、


急に、異様な不安にかられた。




心臓が鈍く響いて、ゾクッとした。





「宝探し、しよ」

「あ、いいよー」

「ただし、最後なので俺が隠れる」

「えー?まあ、仕方ないなぁ。最後だからね、特別だよ」



タカが後ろを向くのを見てから、

走った。
できるだけ、見つからないところに、

できるだけ、長く、


彼女と遊んでいられるように、



草を掻き分けて、
しゃがみこんだ。

ここならどこの角度から見ても見つからない。


近くに来ても、気づかれない。


すぐには見つからない。




見つけないで。




見つけないで。




さみしい


さみしい




やっぱり、ダメだ。

このままじゃあ、さみしい。



俺は、タカにとって、ただの家族ではいられない。


何よりも変えがたい、大切な大切な、宝物みたいな存在なんだ。


タカの、大切な人の、大切な人に、なりたい。


俺のものにしたい。


誰のものでもない、

俺のそばでだけ、笑っていてほしい。



好きだ。


こんなに、好きだ。



出会ったときから、


愛してた。










「みーつけた!」


「……あ、」


「甘いねぇ、キノくん、尻隠して、頭隠さず?上からはすぐ見えたよ」



このままじゃ、


このまま、終わるなんて、






「ほら、」



タカの伸ばした手のひら


俺は、その手を取って、ひっぱりあげられた。








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