【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ぼーっとした頭のなかで、ひとつだけ、
このままじゃ嫌だって、叫ぶ俺が、
指先から反応して、彼女の華奢な腕を強引につかんで、引き寄せていた。
キスをした。
ほんの一瞬、俺を引き上げて力を緩めた彼女に、
不意討ちで、した。
顔を離したとき、完全に、うつむいたタカを見て、とんでもないことをしたと気づいた。
だけど、だから、もう、引き返せないと思った。
「好き、なんだけど、」
精一杯声を振り絞った。
緊張すると、喉が乾くんだな、
今すぐ、水がほしい。
もう、戻れない。
「……出会ったときから、ずっと、また会えたらって思ってた。
それは、好きになったから。
俺、タカが誰よりも大切だ。宝物みたいに、大事だ。
タカにすごく感謝してるのに、俺なにも返せないでさ、それなのに、こんなこと言うのはわがままだけど、
このまま、普通の友達って思われたくない…から…」
なんとか、言ってくれよ。
うつむいたままのタカに無言で訴えかけるけど、タカはやっぱりなにも言わなかった。
終わったな。
完全に、終わってる。
だって、なんというか、恥ずかしがってるというより、暗い顔してるし、
無理なこといってるの、分かってるし。
「…ごめん。先かえる。あ、これ、プレゼント……じゃ、」
ついでみたいに、プレゼントをタカの手に渡して、
それでもやっぱりタカはうつむいていたから、泣きそうになって、
さすがに辛くなって、タカの手を離してその場を去った。
中学二年の、夏。
一生一大の告白をした。
失敗した。