【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
そのあと、タカと、一言も話すことなく、別れの日を迎えた。
真さんが迎えに来てくれて、少ない荷物を持って、その家を出た。
小さい子たちがいっぱい手を振ってくれるなかで、タカは隅の方でそっぽを向いていた。
表情は見えなかった。
もう、正直自暴自棄だ。
タカなんて忘れてやる。
このやろう。
なんて、
ああ、泣きたい。
こんなことなら、なんにもしなきゃよかった。
自分の欲深さを呪ってやりたい。
タカを自分だけのものになんて、わがまますぎた。
タカは、みんなのものだ。
俺なんかのものにしちゃダメだ。
だいたい、そんなこと言ったって、結局俺は、タカにとって特別なものにはなれなかったわけだし。
そして、友人でもなくなったわけで、
むしろ、嫌われたかもしれなくて、
タカの、あんな態度は初めてだった。
喧嘩なんて滅多にしなくて、あるとすれば俺が少し怒られるぐらいで、
無視されることなんて、ほとんど、無かったのに。
もう、話したくないという、意思表示なんだ。
俺はもう、ここには二度と来ない。
来れるもんか。
園長先生たちに礼をして、真さんの車に乗った。
アクセルが踏まれたけど、一度も振り返らなかった。
ただ、なんとなく、
涙が滲んだけれど、
振り替えったら、後悔することが多くて、
もっと泣いてしまう気がした。
「隆也くん、寂しいの?」
「……ううん、」
「なんか、食べたいものある?今日はなんでもおごるからねー」
「………なんでもいい」
「じゃあ寿司いこっか。俺食べたいからさ」
真さんの笑顔が優しすぎて、
余計涙が出た。