【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
少し、段ボールやら教科書やらで汚い自分の部屋に、真さんが買ってくれたベッドがあって、机がひとつ、

飲みきれなった水の入ったコップを手に持ったまま天井を眺めた。

なんか、こっちに来てから全然遊んでいない。


あっちにいた頃は、嫌でもタカに連れられて遊びに行っていた。



中学生になってまで、全力で自然と遊ぶなんて、結構恥ずかしいことしてた。

けど、タカはゲームでも遊んでくれたし、

漫画も一緒に読んだりして、

好きなアイドルの歌とかも一緒に聞いた。


正直、かなり充実していた。
全部、タカが側にいたからだ。


タカの側に居なかったら、こんなに、俺は何もないのか。

ひまだし、つまらないし、何より、寂しい。



学校では、あまり話せる人も居ないし、
いや、ひとり、話しかけてくれるやつは居たけど、


あいつは学級委員だから事務的なとこもあるだろう。


とにかく、クラスに馴染めていないのは確かだ。
タカは偉大だったな、ほんと。


『隆也?開けるよ』

「あ、うん」


真さん襖を開けて、中には入らずこちらを見た。
あまり、いい表情ではなかった。

暗い顔だ。


「なにかあったの」

「いや、…うん。あのね、驚かないで聞いてほしいんだけど…

隆也が施設に居たとき…道宮宝って子が居たの?」

「……?うん。居たけど」

「………その子が、事故で亡くなったって」

「え、…………え?」


うん?

え?


ちょっと、何言ってるかわからない。


頭がしびれたようにじんじんと言葉が響いた。
ふと、足元が冷たく感じて、目を下に落とすと、コップが落ちていて、水がじゅうたんに染み渡っていた。


言葉の意味が理解しきれなくて、

口を半分開けたまま、まばたきも忘れて、
真さんを見た。


真さんはうつむいていた。


だから、余計わからなかった。



「なにって、」

「……とりあえず、俺、今から病院行くけど、隆也も…行くよね?」


なんで?

待って。








待って。










「い、行かない」

「ショックかもしれないけど、行かないと、」

「気分悪い、こんな状態じゃ、行けない、から、」


そう言うと、真さんは黙りこんで頷くと、襖をしめた。
やがて、玄関のドアが開く音がした。

俺はベッドに座ったまま、



しばらく一歩も動けなくなってしまった。




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