【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


どれくらい寝たかな。

もう分からないや。


目が覚めたら、いつもと同じ暗くて汚い自分の部屋。



ただ、真さんは居なくて、



はっとした。




真さんの行き先を思い出して襖を開けようとした瞬間に膝から崩れた。

心臓が痛いくらい何度も鈍く鈍く響いた。

なんとか、立ち上がって、台所に行った。


すると、台の上に、真さんの手書きの文字で、
"落ち着いたら、ここに来なさい"そう書いて、場所を記した地図とお金が置かれていた。

ズキンズキンと頭がきしむ。


気分が悪い。


リビングに行って、テレビをつけた。


ニュースがついた。


そのニュースが、タイミング悪く、彼女の死を伝え始めたから、

リモコンを手にとってテレビの画面に思い切り投げつけた。


画面にひびがはいった。


だけど、テレビの画面は消えなくて、


テレビを勢いよく倒してやった。


大きな音を立てて、テレビが画面から床に叩きつけられた、それからやっとテレビが音を出すのをやめた。


そのとき、電話がなった。


俺を呼んでるみたいに、何度も何度も、鳴った。


怖くなって、自分の部屋に逃げ込んだ。

布団を頭からかぶって目をぎゅっと瞑った。

それでも、耳に入る電話の音、


怖くて、震えが止まらなくなった。


やがて、呼び出し音が止まって、
留守電に切り替わるピーという音が聞こえた。



すると、けたたましい怒鳴り声が、

嫌でも聞こえた。




誰の怒鳴り声かも、分かってしまった。




アザミだ。



アザミが、枯れた声で叫んでる。





『なんで来ねーんだよっ

誰のせいで…タカラが死んだと思ってんだよぉお!!

てめえのせいだぞ、おい、聞いてんのか!!?

タカラはなぁ……お前に、お前に会うために慣れないとこ行って、事故にあったんだぞ!!

ふざけんなよっ、お前が!タカラを殺したんだ!!!』



ブツンッ、と、声が途切れた。

それと同時に、呼吸のリズムが狂い始めた。



「…ハァ……ハッ…」



俺のせいで…?


タカが、俺に会うために、来たのか?





どうして、






そんなの、決まってる。






俺が、


タカに、





自分の気持ちを伝えてしまったからだ。





そうだ、タカはそういうやつだ。


優しいタカが、誰かに告白されて、そのまま無視したままなんて、出来るやつじゃない。


例え、好きだろうが嫌いだろうが、そこの白黒つけるに決まってる。



俺のせいで、


タカは、事故にあったんだ。






俺のせいで、




タカは、




死んだんだ。










< 386 / 415 >

この作品をシェア

pagetop