【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
月曜日の朝は体が重かった。
ゲームばかりしていたせいか、頭が時折痛む。
だけど、今日は、行くと決めた。
そろそろ、体調の管理もしっかりしないと、また真さんの迷惑になる。
それは、避けないと。
眩しい太陽を見上げてまた頭が痛くなった。
目線を下ろして、ふと、脇道の草むらに目をやると、カマキリがじっとこちらを見ていた。
足を止めて目を合わすと、パッとかまを掲げて見せてくれて、笑ってしまった。
いいな、カマキリは。かっこいいな。
カマキリを手にとって、手の上で遊びながら学校に行った。
少し、体が軽くなった。
学校につき、教室に入ると、クラスメイトがこちらを一瞬見たけど、すぐに視線を外した。
それだけで、このクラスでの自分の立ち位置がわかった。
居ても、居なくても、どうでもいい存在。
特に仲良くなりたくもない、人間。
今日、仲良くしてくれるのは、このカマキリだけだ。
帰りには逃がしてあげないと。
「よお」
隣の席から、声がした。
「来たじゃん」
見なくても、学級委員長だった。
俺は、そっぽを向いて対応した。
「なに、それ、カマキリ。かっこいいな」
カマキリがまた、かまを掲げた。
嬉しがってるみたいだ。
「木野は虫が好きなんだな、けど、先生に見つかったら怒られるぞ」
「別に、いい」
見つからないようにするだけだ。
「そういや、前買ってたゲーム、あれ俺もやったことあるよ。友達の家でだけど、なんだっけな、
あの、青いパッケージの、あれ結末どうなんの?」
「あれは、最後主人公が実は元から存在していなかったって気づいて……」
あれ、
なに話してんだ。俺。
なんでこいつにこんな話しなきゃいけないんだ。
…いや
俺は、なんでこいつを敵視してるんだ…?
いいやつだ。
例え、俺が一人だからという理由でも、
初めからこんなに気にかけてくれるクラスメイトなんて、
タカ以外にいなかった。
こんなの、
俺の被害妄想にすぎなかった。
簡単に、友達にはなれない。
簡単に、特別にはなれない。
だけど、
なにもしなければ、遠ざかるのみだ。
俺は、マヒロと、
仲良くなれるはずなのに。
「…で?続きは?」
「俺と友達になって」
「え?」
「マヒロは、いいやつだから。友達になって」
じっと、マヒロの目を見ながら言うと、
マヒロが吹き出すように笑った。
「だろ。俺いいやつだもんな。言われるの初めてなんだけど、なんか、嬉しいな。
そうだ、家近いからさ、今度ゲームやりに行くよ」
「家には来るな」
「なっ、なー…わかったよ。ま、とりあえず、仲良くしような」
たった、これだけでよかった。
人と関わるのに、難しいことなんていらなかった。
なんでもっと早く気づけなかったのかな。
俺、タカにベッタリすぎてたんだ。
なあ、
タカ、俺、初めて自分の力で友達できた。
誉めてほしい。