【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
第四章+愛している時間+
一歩踏み出す
『冬休みが終わり、新学期に入り…』
二年生最後の学期に入った。
寒い寒い冬は、なかなか終わらない。
キノが引っ越してから、もうだいぶ経つ。
私は思ったよりずっと、普通だ。
時間が経ったせいかな。
かなり落ちていたあの頃よりは、全然ましだ。
だからといって、彼を忘れかけてるわけじゃない。
キノへの気持ちはまったく変わらない。
好き。
心から、好きだ。
だけど、だからこそ、
私がどうこうできることじゃない。
キノは、私より、もっと複雑な何かで、たくさん悩んで、それで決めたことだ。
私はキノの幸せをただ願ってる。
これで、いいんだ。
…ただ、一つ。
もう少し、
キノの口から聞きたかった。
悩みとか、辛いことも、みんな。
私には一つもうち明けてはくれなかった。
それだけが、寂しかった。
私が知らないキノがどこかで苦しんでいたのに。
知っていたのに。
私にはなにもできなかった。
踏み込めることじゃないとわかっていても、
自分の無力さは、自覚せずにはいられない。
「フーちゃん、テスト、教室戻んなきゃ」
「あ、うん」