【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―

…とまあ、
こんな流れでキノの様子を見に行くことになったわけだけど…


「いっくよー、フーちゃん!!」


次の日は休日だった。
お父さんとお母さんは仕事に行き、私は一人家で寝ていたところ、

急にエリちゃんが訪問してきた。

背中にはリュックを背負って、首にはマフラーがぐるぐる巻きにされている。


「……どこ行く気……?」

「なーに言ってるの!一緒にキノくんに会いに行くの!」

「…ん?…え、…いま?」

「すぐ!!」

「………」


びっくり。




だって、そんな昨日言い出して、今日行くなんて思ってもみなかったし、

第一、別に急ぐことでもないし…



「だって、フーちゃんそのうちーとか言ってさ、絶対長引くもん。
行くって言ったらすぐだよ。じゃなきゃ、どうせまたごちゃごちゃ考えちゃうんだから!!ほら、準備して行くよ!!」

「け、けど、全然準備してないし…もう少し計画立ててから…」

「電車で二時間、持ち物はお金だけでいいよ!お腹すいたときの食べ物ももう買ったし、ほらほら着替えて!」


もうエリちゃんがこうなったら何がなんでも実行する。
エリちゃんがそういう人だと私は知っている。

私は急いで着替えて身支度を整えて、エリちゃんと家を出た。


けど、それにしてもこんなすぐに実行するなんて、
いくらなんでも驚きだし、

…まあ、また長引かせたらぐちゃぐちゃ考え出してしまうのは、確かに一理あったけれど。

まさか、まさかな~
今からなんて…


私は、なんて言ったらいいのかもまだ、

分からないよ。



「…フーちゃん怒ってない?」

「そんな、まさか。びっくりしたけど、エリちゃんの言う通りだから。ありがとう」

「えへへ、よかった」


ニコニコのエリちゃんを見て、自然とこっちも笑顔になった。こんな感じなら、きっと大丈夫な気がする。

キノと二人でってなると、さすがに辛いけど、
エリちゃんが居るならなんとかなりそう。

今日は少し天気が悪い。

今にも雨が降りそうな嫌な天気だ。


まだまだ冬から抜け出せない。
まだ、一月だものね。


早く暖かい季節にならないかな。


寒い。




駅に近づくと、エリちゃんは駅に向かって大きく手を振った。
何事かと思うと、向こうにいる二人のうち一人は手を振って、もう一人は軽く手をあげた。

えー。

一緒に行くのはエリちゃんだけじゃないらしい。





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