【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
はっ、と目を覚ますと、
リビングの天井が目に入った。
体を起こすと、窓はしっかり閉じていて、
やっぱり夢だったと自覚した。
そりゃそうだ。
こんなとこまで来るわけがない。
時間がたったんだ。
もう今さら彼女はここに来ない。
そう思うと、少し悲しくなった。
全然、断ち切れていない。
夢で会っただけであの有り様だ。
実際会ったらどうなることか。
キスだけじゃ絶対済まさない。
何かが色々と壊れる気がする。
「…あれ?」
毛布をかけて寝ていたことに気づいた。
俺、かけて寝たっけ。
おかしいな。
たしか、気がついたら眠っていたから、毛布なんて持ってきていないはず…
「あ、起きた」
「…………………」
「……黙らないでよ」
あれ、まだ夢かな。
「ちょっと、もう、寝ないで。
私は、キノに会いに来たのに、
なんで、また寝ちゃうの」
「………………タカ?夢だよね」
「夢じゃないよ」
「だって、タカがこんなとこいるわけないじゃん」
「そうだけど、だから、会いに来たんだって」
「なんで?」
「なんでって、」
「俺のこともう嫌いでしょ。なんで、来るの?
何のために来たの?」
タカがここに来る意味なんてない。
だって、俺はタカにひどいことしてたし、ひどいこと言った。
それなのに、
会いに来るわけない。