【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


キノへ



お前は嫌いだった。
昔から、たぶんうちの親よりも嫌いだ。

お前に関しては良い思い出の1つもねえ。

けど、1つだけ謝らなきゃなんねーことがある。

タカラが亡くなって、お前ん家に電話したとき、お前出なかったけど、聞いたよな。

お前のせいでタカラが死んだって。

あれ、嘘。

俺のただの逆ギレ。


タカラがお前に会いに行く途中で事故に遭ったのは本当だけど、

それを促したのは俺だ。

タカラはお前を好きだったから。

けじめつけてこいって言った。
そんで、事故に遭った。

お前のせいじゃない。

俺のせいだ。

どう償えばいいかもわかんねーままずっと生きてきた。
お前に罪の意識背負わせたままで申し訳ないと思ってる。

それでも、今思うのは、それでも生きていくしかないってことだ。

お前が今苦しんで生きてきたみたいに、俺も、これからずっと苦しんで生きてく。

ずっと、心のなかでタカラを生かし続ける。

お前もそうやって来たんだろ。

だから、今になって、フユを遠ざけたんだろ。

お前が今、どんな気持ちかわかんねえけど、
嘘だけはつくなよ。

自分に嘘ついて、お前もフユも傷つくのはもういいだろ?

お前が、どんな答出しても、俺は、もう文句言わねえよ。

苦しんでもがいて決めろ。


だけど、
タカラのことは絶対忘れんなよ。

タカラがお前を好きだったこと、お前に伝えようとした想い、絶対に忘れんなよ。

そんで、これからも、苦しみ続けろ。

あともう1つ謝ることがある。

俺も、フユを好きになりかけた。まずかった。

いや、好きだったのか?
わかんねーけど、

まあ、なんだ。

悔いのないように生きろよ。






アザミ
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