【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
マヒロくんの事情
「は?オニヤンマ?」
「うん。オニヤンマ追いかけてったので先にかえった」
マヒロくんは呆れ顔でまじかっと呟いた。
夏休みも中盤にさしかかったある日
図書館で集中して勉強でもしようと向かったところ
マヒロくんと偶然会って図書館付属のカフェで一休みしていた。
平日の昼下がりのカフェはガランとしていて広々としている。
「で、どうだった?」
「なにが?」
「だーかーら、キノのキスの感想」
「どうって……」
うーん、と悩んでいると
マヒロくんが舌を出して私の口元を指差した。
「べろ、入れられなかった?」
「は、は!?」
「あれ、ベロチューしなかったの?」
「し、しないよ、そんな」
思わず立ち上がって乗り出しながら言ってしまった。
マヒロくんは優しくて面倒見もいいけれど
たまに話すことが…えろくなる傾向がある。
「なんだ、やんなかったのかあいつ
この前話したときやるって言ってたのに」
「え!?な、なにを話しているんですか!!?」
「まあまあ、落ち着いて落ち着いて
男子高校生ですから」
まあまあとか諭されても…
いったいキノはマヒロくんと何を話しているんだか