【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「今日は用事だから」
用事というのは
今夜うちの親と幼なじみのヒロちゃんこと長谷川麻広の親が三泊温泉旅行に行くということで
ヒロちゃんが一人は心配だなんだで親同士で話し合った結果
私が夕飯を作らなければならなくなった。
お母さんたちはそれが当たり前みたいに言っていたけど
あり得ない!
いい年した男女二人を同じ屋根のしたに置くなんて!
それよりも気になったのは
なぜ理由が女の子の私の心配ではなくあの長身でどう見ても頑丈そうなヒロちゃんを心配してなわけ?
…まあ、いいよ
この頃
私には恋心を抱いていた相手がいた。
中学のころ、断トツで人気があった人
優しくて綺麗な顔で頭もよく運動もできる
まあ、
ヒロちゃんなわけだが。
中学生の恋がどれだけのものかなんて知らなかった。
皆、ヒロちゃんを恋する乙女の目で見ていたから
私も便乗してみたら
結構なドキドキを味わえた。
私は
ヒロちゃんに恋をしていた。
親同士が仲良しで私とヒロちゃんは小さな頃から一緒に遊んだりお互いの家をよく行き来していた。
幼なじみという特権で誰よりも近くにいれるのは計り知れない優越感だった。
けど
誰一人
私の気持ちを知る人なんていなかった。
同じクラスの同じ学級委員をする私の幼なじみ
告白も絶えなかった。
この学校はおろか、他校からも告白しに来る子は多くて
よく友達とその現場にたまたま居合わせて
ヒロちゃんが断るのを聞いて安心していた。
どんな可愛い子が来ても
ヒロちゃんは首を縦にふることはなくて
もう、そういうものなのだと思っていた。
私は告白しようだなんて一度も思わなかった。
普通に、振られるのがめちゃくちゃ嫌だったから。
自分でいうのもなんだが
私もそれなりに告白をされて断ってきた身だった。
そんな立場で
私が振られるのは
プライドがどうしても許さなかった。