【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―



「えーと」



"隆也"



「えーと」



…隆也

隆也隆也たかやたかやタカヤ


隆也がなんかゲシュタルト崩壊してきた。



「早く言えよぉ、照れんなよぉタカー」


ニヤニヤと笑うキノが腹立つ。

別に照れてないし


ただなんか

慣れてないからちゃんと言えるか心配というか

隆也のイントネーションどうだっけとか


いやどうでもいいんだけども。



「た………たか…や………」


うお、思ったよりずっとこっぱずかしい。

名前言っただけなのに

てか静まり返るんじゃないキノ。

あんたが言えっていったんでしょボケナス



「……あー」


「あーって、なに」


「いや、なんか」


「はっきり言ってよ」



口元に手を当てながらキノは私を見るとニヘッと笑った。



「ちょっと興奮しちゃった」


「なんで!?」


「だってタカがそんなもじもじしながら名前呼んでくれるから」


「してないしもじもじしてないし!
なんならもう一回言ってやろうか?
たかやたかやたかやたかやたかや」


「そんなありがたみのない大量生産いらないです!」


だけどやっぱり

私はキノって呼ぶんだけどね。

名前なんていつだって呼べるけどさ

キノって呼び方の方呼びやすいし

キノはキノだし(笑)
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