【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
ヒロちゃんに渡された鍵を見ると妙に空しくなった。
これが失恋の痛みってやつですか?
まあ、いっか
悩む自分がうざくてとにかく吹っ切れようとする。
よく考えたら
あの女子高生よりも、私の方が可愛かった気がするし。
まあまだ顔も子供っぽいけれど
近くにこんなに料理上手の美人がいるのに他の女の子を選んだヒロちゃん
いつか後悔しなさいな
カバンをリビングのソファーに置いて台所にいき、スーパーの袋から買ってきたものを出した。
さっさと作って休もう
寝ればきっと全部忘れられる。
早速料理をはじめた。
ニンジンをとにかくでかく切った
カレーに唐辛子入れた
まったく憂さ晴らしにもならなかった。
味見をしてみる
うん、まずい
いつもはこんな味にはならないのに
やっぱり悪意を込めすぎたか、くそ
いいや、ヒロちゃんならどんなにまずくても全部食べてくれるし
元栓を消してソファーに寝転がった。
何度もこの家に遊びに来た
暇なとき
課題終わらないとき
嫌がらせしたいとき
違う
どんな状況でも頭に浮かぶのはヒロちゃんだったから
だからいつも来た。
誰よりもヒロちゃんの近くでヒロちゃんを見てきて
誰よりもヒロちゃんを知っているのに
ヒロちゃんは別の人を好きになってしまった。
「………バカ」
もういい
ヒロちゃんよりもイケメンで優しい人見つけるから
バーカバーカ
あー、暑い
静まりかえったリビングで時間だけが刻々と過ぎていった。
最初は周りに合わせてヒロちゃんを好きになっただけなのに
私
かなり好きね、ヒロちゃんのこと
もういいって思っても
一秒でも早く会いたいって思ってる。
可愛くて料理上手な女の子がこんなに一途に他の女とにゃんにゃんしてる幼なじみの帰りをひたすら待ち続ける…
やばくない?
私健気すぎじゃない?
………はぁ
いつのまにか
眠っていた。
ずいぶんと長く寝ていた気がする
ふと気がついて時計を見てみると
8時を回っていた