【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
一週間後
休んだヒロちゃんは何事もなかったように元気に登校してきた。
すこし長い風邪にみんな心配していたけれど
ヒロちゃんはいつもの笑顔を見せてすぐにクラスに溶け込んだ。
だけど
私は何かおかしいと感じていた。
また、ヒロちゃんが何かぎこちなく感じたからだ
ヒロちゃんはあんなその場しのぎみたいな笑い方はしない
いったい次はなにがあったの
ほんとに風邪だったの?
ヒロちゃん
いつになったら話しかけていいの
ヒロちゃんは用があるとかなんとかで早めに帰った。
時間があけばまたヒロちゃんと話もできると思ったけど
そうでもないみたい。
肩を落として家に帰ると
お母さんが誰かと話している声が聞こえた。
リビングを覗いてみると
電話で話しているようだった。
『それで?マヒロくんは大丈夫なの?』
ヒロちゃんのお母さんと話してるのかな
私はすぐにリビングには入らず壁を背にしてしばらくお母さんの声を聞いていた。
お母さんの声はあまり元気ではなかった
ヒロちゃんのお母さんと話してるときはいつも元気なのに。
『そう、中絶するのね。』
中絶?
あの、赤ちゃんをおろす手術のこと?
なんでヒロちゃんの心配のあとに中絶の話なんかしてるの?
『マヒロくん、真面目そうなのにこんなことになるなんてね』
こんなことって
どんなこと
『彼女さんに妊娠させるなんて』
じんわりと
額に汗が滲んだ。