【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
だんだん
二人の会話が聞こえてきた
「ほんっと、最悪よ
だいたい付き合ってもなかったのよ?
遊びだったのにさー」
「そうだよねーほんとの彼氏の方はどうなったの?」
「だからひどいんだってば、私は別に本気じゃなかったって言ったのにあいつ許してくれなくて」
「そっか〜災難だね〜」
「ほんと!顔がいいからって中学生なんかと付き合うんじゃなかった!
まあ、もう振ったからいんだけどー
手術代もあっちが全部負担するらしーし」
そういって笑う人は
私が初めて彼女を目にしたときの印象とはかなり違って
ショックをうけた。
遊びで?
なにいってんのこの人
頭に血がのぼってくるような感覚だった
頭がすごく
熱くなって
そこまで近づいてきてる彼女に向かって走ると
思い切り
腹を蹴りあげた。
頭のなかがぐるぐるしていた。
ただ
この人だけは
絶対に、
許せない
いや
許してはいけない
周りの通行人がざわざわと通りすぎていく。
目の前で腹を抱えて倒れた人をその友達がしゃがみこんで心配した。
私は彼女を見下ろした
「ちょっと大丈夫!?」
「な、何すんのよ!!あんた、誰よっ!?げほっ、」
「ヒロちゃんの、マヒロの、幼なじみ」
「はあ?マヒロの?
わけわかんないんだけど」
わけわかんないのはこっちだ
信号が点滅し始めているとか
人が足を止めて私を見ているとか
どーでもよくなった。
私は彼女の上に馬乗りになって胸ぐらを掴み、顔を歪めた
怒りと悲しさと虚しさと
色んな気持ちが混じってもうわけがわからない。
息が整わない
興奮が
収まらない