【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
仲直り大作戦
「とまあ、こんな感じに一途で優しくて美少女の七瀬恵梨香ちゃんは
三年間近く幼なじみとは会話もせず影で見守っているのでした!
ああ!なんていじらしい!」
軽やかに笑って七瀬さんは演技がかった動きで両腕を広げた。
私は衝撃を受けすぎて口がぱくぱくしていた。
え?
あのマヒロくんが中学生のとき彼女妊娠させて
それからまるで腹いせのように年上の女性をもてあそんでは捨ての繰り返しで…
えーっと
「ね?大した話じゃないでしょ?」
「なんていうか、あの、思ったよりてか
かなり、ものすごい話だし
重すぎてびっくりしましたけど、」
「そう?
なんか逆に思い返すと懐かしさも出てくるよね」
「そうだ!壮絶すぎていい忘れてたけど
七瀬さん、マヒロくんが好きだったの?!」
「うん、そだよ」
「はぁああ、そっかあ」
「ヒロちゃんは私のことだいっきらいだけどね」
はっはっは、と笑う七瀬さんは
少し無理してるように見えた。
七瀬さん、ずっとマヒロくんのこと心配していたんだね。
ああー、七瀬さんの印象がうなぎ登りでよくなっていく。
こんなこと、切なすぎる
マヒロくんはそんな七瀬さんの心も知らないなんて
「高橋さん、」
「え?」
「誰にも、言っちゃダメよ。ヒロちゃんのこと、私のこと
守ってね、ずっと内緒」
「そんな、マヒロくんはきっと知った方がいいんじゃない?
そうじゃないと、七瀬さん、いくらなんでもかわいそうだよ…」
マヒロくんは優しい人だから
きっと、和解できるはずだ。
「いい、いい!
もう、ダメなんだよ
私がなにいったって
あの日言ったことは消えないから」
「言ったことは消えなくても
仲直りはできるよ
きっと」
「…無理だよ」
七瀬さんはふと俯いてしまった。
「本当は怖いの
また、ヒロちゃんに嫌われたらどうしようって
まあ、嫌われてるんだけど
これ以上は、辛いし」
「マヒロくんは、そんな人じゃないと思うよ」
「俺も、そう思う」
「うん、だから、七瀬さんがんばろうよ
…は?」
ふと隣に目を向けると
キノが平然と立っていて
目を疑った。