【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
夏休みが終わりに近づいている最中


劇も本格的に通し練習が入ってきた。

なんとか台詞は頭に叩き込んだものの


ふとした瞬間に度忘れしてしまうことがある。


まあ、こちらはなんとかなりそうだ。

いや、ならないかも

ちょっとヤバイ

まあがんばろう


そして

練習終了後

私とキノは
学校の体育館のギャラリーでバスケ部見学


というか終わるのを待っている。

隠れながら


「バスケ部って名前だけでもかっこいいイメージあるよね」


「そう?俺もバスケできるよ?」


「できるできないじゃないんだよ。
部活で友達と汗かいて走って時にぶつかり合いながら団結を深めていくのがいいんでしょ」


「ふーん、わかんねー」



ぶすっとした顔でキノはその場で寝転んだ。

スポーツをするのは嫌いだけど見るのは好きな私は夢中でバスケ部を見ていた。


「タカー、タカー、高橋さーん」


「なに、ねえ、キノ遊びに来たんじゃないんだからね」


「だってさー、まだ全然終わりそうにないしー

いいじゃん、遊ぼうよ冬ちゃん」


「冬ちゃん呼びやめい」



なんかドキってしちゃったじゃん。
不可抗力死ねこのやろ



「タカも寝転んじゃえよ。ゴロンて、ほらぁ」


「ちょっ、と、もー」


キノにからだごと引っ張られ倒れこむ。

床なんてそんなキレイじゃないのに…


「キノ床汚いから」


「じゃあこっちおいでよ」

「なにいってんのバカじゃないの」


両手を広げて載っかってこいと言わんばかりのどや顔。

なにどや顔で恥ずかしいこと言ってんの。


「タカのこと抱っこしてみたい」


「やだってば」


「したい」


「ダメ」


「うるさい」


「はあ?」


うるさいって、こっちの台詞なんだけど!?

言い返そうとしたとき

ふわりと
体が浮いた。


脇にキノの両手

上半身がぽすんとキノの上にのった。



「……なにすんの」


「怒んなよ、」



キノの胸のあたりでぎゅっと抱き締められ私は顔が真っ赤になって

顔を隠すように背けた。


キノの心臓の音

ゆっくりだなぁああ……


少しくらいドキドキしたらいかがなの



「タカって思ったよりでかいね」


「失礼っっ」


私158センチで至って普通ですけど!?



「いや、胸の話」


「デリカシーっっ」


バシーンとキノの頭を叩くけれどキノの腕の力はまったく緩まない。


男の人の腕は


想像以上にがっしりしていて
力強いらしい。



「離して……」


「やーだ、タカ、顔真っ赤」


「見んなぼけ」


「顔は叩かないでっ」



手を掲げたらキノが慌て出した。
なにその顔への配慮は

頭はいいの

とりあえずもう一度頭をバシーン、
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