【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
新しい
世界を見てしまった気がする…
「た、タカー……」
今までにないぐらい弱々しい声のキノに
背中を向けたまま床に座り込んでいる。
バスケ部は先程練習が終わり体育館を掃除している。
時間は
午後5時
「ごめんって、ねえ、タカ、無視しないで」
「…死ねば」
「彼氏に言うせりふ!?」
キノとの二回目のキスは
体育館のギャラリーの
誇りまみれの床で
ディープな方だった。
正直な話
悪くは、なかった、よ、うん
頭が真っ白になるぐらい
とろけてしまいそうだった。
許せないのは
途中で抵抗さえしなくなり、あまつさえキノの首に腕をまわしてキスに応じてしまった
この、私なのだ。
なんという体たらく
なんという屈辱!!
「タカ、そんなに、嫌だった?」
嫌とかじゃないんだって
「俺のこと、嫌い?」
んなわけないじゃん、バカなの
「ねえ、もう、しないから
タカがそんなに嫌だったんなら、俺、我慢するから
だから無視しないで…」
まるで捨て犬のようにしょぼくれてしまったキノ
別に、そんなに怒ってないのに
許したいけど
何て言えば…
「タカ、ごめんね、ごめん、
機嫌なおして…」
キノが意を決したのか背中から抱き締めてきた。
はあぁ…
なんか、可愛い…
ちょっとマヒロくん待ってる途中なのになんでこんな不謹慎な展開になったのよ。
「わかったから、許す、から」
「ほんと?」
頷いてやると
キノはもう一回ごめんね、と言いながらぎゅっとした。
「タカ、大好きだから
もう、しないからね」
「………」
なぜか
もうしない方向に話が進んでいる…
ああ、どうしよう
したくないわけじゃないんだって
「あのね、キノ」
「なに?」
「キスは、いい、やっていいの、
私だって
キノが好き、だから」
「けど、嫌なんでしょ?」
「嫌じゃないよ、嫌じゃないんだけど……」
「恥ずかしかった?」
「う、うーん、」
「タカ可愛い」
…うーん