【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―


「あいよ〜たこ焼き出来たよ」


たこ焼き屋のおばちゃんが愛想よくたこ焼きをマヒロくんに差し出し
マヒロくんは自腹でたこ焼きを購入した。


相変わらず金欠のキノは買い食い代の方も金欠らしく
仕方なく私の分を分けてやることにした。


夕方に差し掛かっており
ヒグラシの切なげな鳴き声が耳にこだました。


近くのベンチに座り

もくもくとたこ焼きを頬張るキノ


私も一個口に入れる。


うん、うまい


安いわりにうまいからいいんだよねここ


…じゃなくて


私たちはこんなのんきにたこ焼き味わうために来たんじゃないのよ!


七瀬さんの話題をださなきゃ…


ちらっとマヒロくんの様子を伺いたこ焼をごくんと飲み込んでから
マヒロくんに顔を向けた。


「マヒロくん、あの、あー、文化祭何するの?」


「うちのクラス?えーと、たこ焼き屋」


「た、たこ焼き?」


「何したいって聞かれてたこ焼き屋でいいんじゃねって言ったら

そうなった」


「そうなんだ…」



マヒロくん…

たこ焼きすきだなっ


そうか、
マヒロくんが提案したらそりゃあその通りになりそうだ。


マヒロくん女子に人気だし。



…だからこんな話じゃなくて!

そうだ、七瀬さんはシンデレラ役だから劇の話を出せばいいんじゃないだろうか。


「うちのクラスはね、シンデレラの劇するんだって」

「あー、聞いた聞いた、そうだキノお前王子ってマジなの?
デマ?」


「……デマではない、」


「キノお前大丈夫かよ

まあお前顔だけはいいもんな、ははは」


「タカがいつも近くいるから、何とかなってる」




うわぁあ


七瀬さんが登場しない!!
怪しまれないようにってどうしたらいいんだろう。

てか、キノも早く話題を七瀬さんにしなさいよ!


目でキノにうったえるとニコニコ笑っていたキノが急にハッとした。



どうやら思い出したらしいぞ!

キノは深呼吸すると、集中するように目の色を変えた。

これは

演技をする前のキノだ!


「マヒロ、七瀬さん可愛いけど彼氏いるのかな」


「は?」



マヒロくんがめちゃくちゃ怪訝な顔になった。

てゆか、キノ、セリフ通り言いやがった。

さすが演技は上手いとは言え

流れがない!

話題変わりすぎだよ!

不自然だよ!


私がなんとか繋げないと…
気づかれちゃダメなんだから
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