【完】宝探し―世界で一番愛しい人は―
「き、キノ?」
右腕をマヒロくんが
左腕をキノが掴んでいる状況で
私はわけもわからず二人を交互に見た。
「マヒロ、タカに触んな」
キノが
珍しく真剣な面持ちでマヒロくんを見据えていた。
マヒロくんは相変わらずの表情だ。
冷たい目線が
容赦なくキノを見つめ返している。
あれ、
いったいなんでけんかになったんだ?
七瀬さんの話をしに来たのに…
「キノが離せよ
高橋さんに話すことがあるから」
「タカは話すことなんてない」
「あるよ!?ちょっとキノ落ち着いて、
けんかしにきたんじゃないでしょ!!」
「うるさい、タカは黙っとけ。
マヒロ、いい加減にしろ
タカにちょっかい出すな」
「ちょっかい?これがちょっかいに見える?
いい加減にしてほしいのはこっちなんだよバカ」
なんでなんでなんで
キノが言うこと聞かない!?
とりあえず私を挟んでけんかしないでいただきたいのだが
…てか、なんで言い争ってんのこの人たち
「あっっ!キノの後ろにでかいカエルが!!」
急に
マヒロくんがでかい声でキノの後ろを指差した。
「えっ!?」
キノはマヒロくんにつられてさっきまでの剣幕が嘘みたいに目を輝かせながらふりむいた。
私もついカエルと聞きぞっとしてふりむく。
キノの腕が自然と私の腕からするりと離れ落ちた。
そのとき
ぐんっと体が傾いた。
マヒロくんが無言のまま力強く私の腕を引いたのだ。
キノはキョロキョロとあたりを見回している。
やっぱりマヒロくんのはったりなわけで
マヒロくんの力に抵抗できず私はマヒロくんについていくしかなかった。
「キノ、」
キノの背中に呟いたけれど
キノは気づいてくれなかった。
仕方ないか
カエルの話題出されちゃキノに勝ち目ないよ。
それよりも
やっぱりキノは私よりカエルなのか…
軽く落胆しながら
とりあえず二人になったら七瀬さんのこともちゃんと話そうとうっすら考えていたので
あまりあせることはなかった。
キノとけんかするなんて思いもよらなかったけど
大丈夫だろう
たぶん。