『死』と言う名の何か【短篇集】
(こいつを抱えて歩道橋を渡って親元に連れて行ってやろう)

改心した彼の最初の優しさだった。

しかし、彼の手が子犬に触れる直前、子犬は勢いよく地面を蹴った。

少しだけ途切れた車の様子に、今だと感じだのだろう。

ただ、その途切れは一時的なものに過ぎないのは彼にも理解出来た。

走る子犬に猛スピードで迫り来る車。

子犬には気付いてないらしくスピードを緩める気配すらない。

その様子にようやく気付いた子犬は、道のり真ん中で足を止めてしまった。

チッ

小さな舌打ちと共に彼も勢いよく地面を蹴った。
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