『死』と言う名の何か【短篇集】
あんなに優しかった彼は、物にあたるようになってきた。

壁を殴って穴だらけ。

ペアで買った食器は見事に粉砕。

さすがの異常な物音に隣人からはクレームが来る。

すると今度は、私に手をあげるようになった。

「お前は仕事のない俺を見下しているんだろ!」

日に日に増す痣と比例するかのように愛情は薄れていった。

私の知る優しい彼の面影はもうなくなってしまっていた。

でも、まだ信じていたかったんだ。
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