『死』と言う名の何か【短篇集】
ただ一点を見つめている瞳。

心ここに有らずといった感じで、俺に気付いていない様だ。

俺は彼女に何て言葉をかければいいのだろうか?

そんな事を考えている間に周りは、ざわつきだした。

「どんな人?」「えっ…知らないよ」「ほら、背の高い人だよ」「…わかんないなぁ」

口々に発せられた言葉は耳をすり抜ける。

先輩は目立つ人じゃなかったからみんなよく知らないらしい。

きっと、この中の誰よりも彼女が一番よく知ってるんだ。

だから、今にも涙が落ちてきそうな瞳だった。
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