君色に染まったままで

「彩葉、風呂は入っとんのけ?」

「あ、まだ」

「お前荷物は?」

「財布とスマホだけ」

「あほぉ、明日学校やんけ」

秋人は洋服ダンスの中をゴソゴソと掻き回しながら呆れ口調で話を進める

「風呂入ってき」

それと同時にタオルとトレーナーが飛んできた
うちは飛んできたそれらをキャッチすると風呂場へと足を向ける
脱衣場でピアスをとってポッケにしまい、服を脱いで風呂へと入った

「ふー…」

あったかいお湯につかると自然と力が抜けて一日の疲れがすーっとぬけていく
お風呂を出るとさっき着てたジャージのポッケからピアスをとり、もう一度耳へつけた

「あきー」

「出たんか、髪乾かすけん座り」

うちは秋人の前に座ってドライヤーをしてもらうと秋人にもたれかかった

「どしたん?」

「明日学校休みたい…」

「あほ、入学式の次の日に休んでどーするんよ」

秋人が後ろから抱きしめてくれた
秋人はうちが元気出る方法をよぉ知ってるなっていつも思う

「今日はもう寝よか」

秋人の提案にうちは頷くとのろのろとベッドにあがった
秋人は床に寝転ぶ

「ねぇあき」

「なん?」

「一緒に寝ん?」

うちが言うと、秋人はベッドに入ってうちを抱きしめた
秋人の匂いが優しくうちの体を包む
うちはすぐに眠ってしもた






「彩葉さん」

懐かしい声がする…
最後に聞いたのはいつやったかな…
うちの大好きな優しい声が、うちの名前を呼んどる

「祥貴…!」

うちも彼の名前を呼ぶ
けど、彼の姿は見えんくて…
< 10 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop