君色に染まったままで

第2話 思い出

うちは電車に乗って座った
今日は何故かうきうきする
少しオシャレに決まっとる髪型
右耳で光る星のピアス、今日はそれもキラキラしとる
秋人は魔法使いや、うちを元気にしてくれる

「ん?彩葉?」

「あ、莉帆おはよー」

あとから乗ってきた莉帆が目を丸くしてうちを見る

「どしたんその髪!?」

「んーこれ?あきにしてもらった」

うちはにひひっと笑った
莉帆が笑って横に座ってから少し間があって聞いてきた

「それ校則違反やない?」

「あー、うんー、でもまぁいっかなーって思って」

うちが苦笑いすると莉帆は呆れて肩をすくめた
目の前の窓を外の景色が流れて行く
今日はその景色も鮮やかだ

「うん、今日は頑張れる…」

うちは窓に写った自分に笑いかけると、そこに座っとった小さい男の子が
引いとった…

「ついたついたー、降りよー」

莉帆がそう言って立ったからうちもその後に立ち上がって降りた
途中で由衣と合流してさっき莉帆とした会話をまた繰り返す
やけどそんなことも楽しかった

「おはようございま…日向さん!?」

門をくぐると担任がおって驚いた顔でうちの腕をつかんだ

「…なんすか?」

うちは担任の手を振りほどいて睨むと莉帆と由衣のところに戻る
由衣は呆れとるみたいやけど、これがうちのスタイルやから直せれん

「ほんと彩葉は…」

「今日のうちは最強なんです!」

ドヤ顔したら莉帆に頭を叩かれた
なかなか莉帆は力が強い

「ちょ、莉帆ー、せっかくあきにしてもらったのに崩れるやん!」

「崩れときなさい!」

莉帆と由衣に挟まれて説教されると耳が壊れそうだ

「…彩葉」

「なん?」

「彩葉とおったらめっちゃ見られるんやけど」

由衣が下を向いて歩きながら訴えてくる
まぁ、こんなんとおったら見られるわな

「じゃぁ、また放課後なー」

「おーぅ」

うちの教室の前まで来ると2人は手を振って階段を登ってった

「あの、ひゅ、日向さん…」

「ん?」

呼ばれて後ろを振り向くといかにも真面目そうな小柄な女の子が立っとった
えーっと…

「まえ、まえー…前浦さん!」

「ま、前上です…」

「え、あ、ごめん」

あちゃー、間違えてしまった
てかなんの用なん?

「が、学級委員として言わせていただきますが、その、ピアスと髪型は校則違反ですので、や、やめてもらえないでしょうか…!」

「無理」

「え!?」

うちは無表情で答えて席につく
てかこの人学級委員やったんや
前浦…じゃなくて前上さんが後からまだ説得してくる

「し、しかし校則違反はよくないと思います!」

うちは後ろを向いてにっこり笑った
あれ?なんで引いとるん?そんな怖がらんでも…

「これ、うちの精神安定剤なんで」

うちはそれだけ言って荷物を片付けた
前上さんの表情は見えんかったけど諦めたんか何も言わんなった

「日向さん、朝から大変だねー」

イケメンっぽい男の子が横から話しかけてきたけど、こんなやつおったっけ?
てかいかんわー、昨日の自己紹介なんも聞いとらんかった

「君誰なん?」

「昨日の自己紹介聞いてなかったん?」

「おん」

うちの即答に男の子は苦笑いする

「川野 蒼(かわの あおい)よろしく、蒼でええから」

「ふーん、よろしく、彩葉でええよ」

うちはそれだけ言うとかばんの中を見る
ん?あー!これまだ途中の小説やん!
秋人よぉ気づいたなー、さすが
うちはその小説を取り出して読む

「彩葉さー、友達少ないんやない?」

「そーやねーそんなおらんねー、蒼は多そうやねー」

うちは小説を読みながら蒼を適当にあしらう
こういうタイプのやつはあんまり話さんほうがええって秋人から聞いたことがあるから

「彩葉冷たいなー」

「うちの体温は低めですけど何か?」

「いや、そういうことじゃないんやけど…」

蒼は疲れた様子で机に突っ伏した
よかった、あきらめてくれて
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