君色に染まったままで
玄関の前で涙を拭う

「ただいまー、おかあさーん?」

中から返事はなくお母さんもお父さんもいないことがわかる
リビングに入ると置き書きがあった

「今日は帰れません…またか」

うちはジャージに着替えると財布とスマホを持って再び外に出た
鍵をしめて道路に出たときやった

「いーちゃん」

呼ばれた方を向くと、そこには俊ちゃんが立っとった
うちは戸惑ってから、俊ちゃんを無視して歩き出した
スマホの電源を入れ、通話ボタンを押す
コールが3回なってから相手が出た

「彩葉どしたんこんな時間に」

「あき、今から家行ってもかまん?」

うちは秋人に電話した
秋人はうちの家の近くで一人暮らししてる

「かまんけど…またおばさんらおらんのけ?」

「おん、一人じゃ怖いけんさ」

秋人と喋りよると、不意に後ろから腕を掴まれた
掴んだのは俊ちゃんやった

「ちょぉ、離して!俊ちゃん!!」

「いーちゃん、俺…」

俊ちゃんの力が強すぎて涙が滲んでくる
怖くなってきて足がすくむ

「彩葉!?どしたん?」

「あきぃ…っ…!」

「今そっち行くけん!」

そういうと秋人は電話を切ってしまった
俊ちゃんはまだ離してくれない

「いーちゃん、そのピアスなんなん?なんの意味があるん?」

「離して、俊ちゃんのこと嫌いになりたくないんよ!」

数分してから息を切らせた秋人が来た

「彩葉!」 

うちは体中の力を使って俊ちゃんの手を振りほどくと
秋人に抱きついた

「あきぃ…あきぃー…」

「ごめん遅なって」
 
秋人がうちの頭を優しくなでた

「すみません、彩葉の知り合いやと思いますけど、今日はお引き取りください、こいつ相当ビビってるんで」

秋人がそう言うと俊ちゃんは黙って去っていってしもた

「彩葉、大丈夫やったか?」

「うん…」

あきはうちの手を握ると歩き出した
うちが泣くとあきは必ずとうして歩く
あきの家についた時にはもう23:00を回っていた
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