Mr. Unknown
 今にしてみたら気に入らなかったんだろうね。


 結婚を迫って、断られた相手に仕打ちをしていい気になってたのに。


 それを助ける男が気に入らなかったんだろう。


 でも、もっと気に入らなかったのはあたしさ。

 
 私はその男を睨み付けた。

 それが精一杯の抵抗だったんだ。

 
 でもそんな事でもあいつにとってかなりの屈辱だったんだろうね。


「調子に乗るなよ!売女!」


 あいつは立ち上がって私に向かって来た。

 
 あたしは心から怖くなって震え上がったんだ。

 
 普通の男なら、

 例え立派な紳士でもあの強面の男が相手なら逃げ出すはずさ。

 

 でも彼は違った。

 
 あたしとあいつの前に立ち塞がったのさ。

 
 あの頼りがいのある背中は今でも夢に出てくるね。
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