Mr. Unknown
 そこからはまるで本で呼んだプリンセスのようだったね。

 
 
 まあ、ちょっと粗っぽかったけど。

 
 彼は私を抱き抱えると階段を上がっていった。

 
 勿論皆の目は私達二人に釘付けさ。

 
 あたしは恥ずかしくて彼の胸に顔を押し付けていたんだ。

 
 汗ばんだ厚いあの男の胸に、

 娼婦仲間だった皆も羨望の眼差しだった。

 
 後で彼とどうなったか聞きたがってね。

 
 
 もう女としての優越感ったら。

 
 その時私は人としての尊厳を取り戻したのさ。

 
 彼はドアを足で蹴り開け、

 二人で部屋に入っていったのさ。


 
 その後、どうなったかって?

 
 
 その後も彼は男だったよ。
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