Mr. Unknown
 彼は弾を込め直すと緊張の面持ちでこちらを見ました。

 

 あの目、あの鋭い目には負けましたね。

 
 まるでこそこそしている私を責めているような目付き。
 
 
 厄日なんだと確信した私はその勇敢な男に掛けてみる事にしたんです。


 倒れていたクロックのショットガンを奪い、

 私は彼を強く見つめ返したんです。


 今じゃ、臆病な私がなんであんな無謀な事をしたんだろうと考えさせられますね。



 でもね、あの男のその時の笑顔は一生の私の誇りです。


 まるでその時に二人は長く共に戦ってきた戦友のような感情が芽生えたんです。

 
 男は銃を握ったまま無言で両手を広げ、

 そしてお辞儀をしてきました。



「さあ、始めよう」



 そう言っている様に聞こえた私は汗まみれの指をトリガーに引っ掻けたんです。  
< 41 / 65 >

この作品をシェア

pagetop