Mr. Unknown
ガンスミスの遺言
 今でもはっきり覚えているのは父が咳き込み、

 血を拭いながらも仕事をしている姿です。



 私が作業場に入ると

 「女が入る場所じゃない」

 といつもどやされていました。

 
 それでも父の作業場に私はいつも入り浸り、

 キラキラ光る鉄の塊を見上げていたんです。


 私も父に似て純粋に銃が好きだったんです。



 造形や、ギミックや重さ。

 
 芸術品だとさえ思っています。



 でも、父はいつも言っていました。


 本当の銃は使い込まれて味を出す、と。


 良い銃は無く、使う人間が銃を育てるんだとも言っていました。


 私はそんな銃を見た事がありませんでしたし、

 見せてもくれませんでした。

 
 だから私も銃を整備する仕事をしたいと思っていました。


 いつかそんな銃に巡り会ってみたいと思ったからです。
 

 変わっているでしょう?

 皆にも言われます。


 そしてある日父は作業場で倒れていたんです。
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