Mr. Unknown
3月21日
その日はそれで終わりじゃなかった。
俺は大失敗をしていたんだ。
「良い銃だ。ところでこのグリップだが」
その時に思い出した。
男は木製グリップに女のデザインが欲しいと言っていたのをすっかり忘れていた。
俺はしまったという顔をしていたんだろう。
「まあいいさ、
あんたは絵描きじゃないんだ。
わがまま言って悪かったな」
俺は必死で奴を引き止めたが、
用事があった様だったので今度必ず寄ってくれと頼んだ。
「また死ねない理由が増えちまったな」
奴は笑って言い去っていった。
しかし咳が止まらない。
死ぬまでに来てくれればいいが、
早速あいつに相応しい
「最高の女」を描かなくてわ。