Mr. Unknown
 気にもとめていなかった前からの待ち伏せにタイタンズは散々にやられた。


 酒を飲み、震えが止まった酔っ払いのハンターの射撃は正確無比だった。


 手の震えを止めるのに酒瓶二本が必要だったが。




 落ちたタイタンズをラミノフ兄弟がオコボレとして仕留める。


 兄弟はお互いを援護しつつ若き故の勇敢さを持っていた。



 狂った神父は銃撃の中、十字架を盾に突っ込み、

 アメーンの散弾を放った。



 まあ、こいつはちょっと異常だな。



 スカーフェイスレディは馬を駈り、陣中を突破した。


 彼女に気を取られた男は、他のキラーズにやられたし、

 キラーズを気にしていた男は彼女にやられた。



 彼女を抱き抱えたあいつは女を下ろすと不敵に笑い、

 両手で銃を構えた。



 こんな話は西部中を探してもない。


 こんな戦い、ありもしない。


 たった五人でならず者百人を相手になんぞ出来るもんか!


 嘘に違いない!




 だがな、俺は報酬を払った。


 払ったから覚えている。


 帳簿には付けてないがな。


 あいつらをみたら、特にあいつを見たら払うしかなかった。




 知ってるのか?


 あいつらを?

 あの男を?



 お前は何も知っちゃいない。



 あいつは「死霊の殺し屋」さ。

 存在しないガンマンだ。

 少なくとも自分が一番だと思っている俺の自尊心の中ではな。

 
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