手の届かないキミと


私は立ち上がると、ゆっくりと、その人のもとへと近づいていく。

立ち上がったときに、西村くんに見られたけど、そんなの気にしていられない…


私に気づいて、好奇の視線を向けてくる人もいる。

でもそんなの気にならない。気にならない。


心のなかで反芻して、唱えるようにして、ざわつく自分の気持ちを落ち着かせる。


彼に近づくにつれ、強い女物の香水のかおりが鼻をつく。

でも、そんなの、気にしない。気にしない。


私が今したいことは、伝えたいことは、伝えたい相手は…

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