手の届かないキミと


私から出た声はかっすかすだった。


「黒岩、いいからまずは古畑に水飲ませてやれよ」

「あ、うん…」


黒岩さんは私が上半身を起こすのを手伝ってくれて、

それからコップに注がれた冷たいお水を渡してくれた。


「だから、敵は近くにいるっつったろ」

「え……」

不貞腐れたように、西村くんがぼそっと話始める。


「案の定じゃねーかよ。アイツのせいで心揺れやがって。

楽なほうに流されてもいいかな、とか思っただろ」


西村くんのいう”敵”っていうのがわからなかったけど、

その口調じゃ……

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