手の届かないキミと


そんな俺が水泳部に入部したのは、ひとりになれる時間が欲しかったからかもしれない。


幼い頃から、夏には毎年おじさんがやってる海の家によく遊びに行ってたし、

泳ぐのが好きだった俺は、小学生のとき、スイミングスクールに通ってた。

中学に入学するのを機に辞めちゃったんだけど…


俺が打ち込めるスポーツって水泳くらいしかないし…

ひとり、放課後の水泳部の部室の門を叩いた俺は、そこでアイツと出会うことになる。


『なんだ、噂の新入生が、こんなところに何か用か?』

今どきの学校っていうのは校内禁煙だ。

なのにアイツ、菊谷はぷかり、部室でひとりたばこをふかしていた。

おそらく…30になろうかならないかといったあたりのこの男は、

顧問という立場を利用して、部室を喫煙所として使っていた。

< 324 / 466 >

この作品をシェア

pagetop