手の届かないキミと
そんな俺が水泳部に入部したのは、ひとりになれる時間が欲しかったからかもしれない。
幼い頃から、夏には毎年おじさんがやってる海の家によく遊びに行ってたし、
泳ぐのが好きだった俺は、小学生のとき、スイミングスクールに通ってた。
中学に入学するのを機に辞めちゃったんだけど…
俺が打ち込めるスポーツって水泳くらいしかないし…
ひとり、放課後の水泳部の部室の門を叩いた俺は、そこでアイツと出会うことになる。
『なんだ、噂の新入生が、こんなところに何か用か?』
今どきの学校っていうのは校内禁煙だ。
なのにアイツ、菊谷はぷかり、部室でひとりたばこをふかしていた。
おそらく…30になろうかならないかといったあたりのこの男は、
顧問という立場を利用して、部室を喫煙所として使っていた。