手の届かないキミと
サトルのあとに多田が続いて、そのうしろから黒岩が…
『悪ぃ、黒岩、古畑のジャージ持ってきて。制服汗で濡れてるから』
女子のほうがいいと思って黒岩にお願いしたのに、なぜかそれは多田の仕事に変えられる。
『私、冷たいお水買ってくるね!』
保健室の先生は慣れたように、『また古畑さん無理したのね』と言って
古畑を涼ませるように俺たちに命じた。
うっすらと目を開けている古畑だけど、その焦点は俺に合っていない。
『…大丈夫だ』
俺の声は、いまの古畑に聞こえているのだろうか。
それでも古畑が表情をゆるめたような気がする俺は、自惚れてるのかもしれない。