眼鏡男子の脳内デフラグ
それから、電車の中でも
松井桜子はずっと不機嫌でいる
……何なんだ?
僕が一体何をしたというんだ?
聞いても答えないし
口がついてるんだろ?何とか言ったらどうだ
ふと、気づいた
そういえば
いつから僕は
松井桜子を気遣うようになった?
今だって、なぜ機嫌を直そうとする?
いつからか、思い出せない
理由は見当もつかない
つかないが
彼女の頭を撫でた
この瞬間、思考と行動が別になった
人間の体は時に思考とは別に勝手に動くことがあるという
「いい加減に、機嫌を直してください」
「……うん」
「明日、来るのですよね?」
「……うん」
「機嫌が悪いまま、明日も会うつもりですか?」
彼女は首を横に振り
「…もう、直った」と言った
「そう」と言いながらフッと口元が緩んでしまった
「へへ。ポンポンしてもらっちゃった~」
「ポンポン?」
「今、頭をポンポンしたでしょ?」
ああ……
「不愉快な思いをしてたらすみません」
「もー、何でそうなるの?」
「ま、いいや。じゃあ明日ね」と電車を降りて行った
“松井桜子はすぐに怒るがすぐに許す”
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