眼鏡男子の脳内デフラグ

「僕に言わせれば、パソコンの方が扱いやすいですけどね」


「えー?そう?」

「そうですよ」


例えば

文字入力だって、キーボードの方が楽だ

スマートフォンは画面も小さいし、
接続によっては遅くなる



書類作りや画像加工…

ま、パソコンの方が僕は好きな訳でして


「なんだか、松井さんと僕みたいですね」

「ん?どういうこと?」


「僕がパソコンなら、松井さんはスマートフォンです」

「?」


つまり


「どちらも同じ、身近な機械ですが…
スマートフォンの方が親しみがありますから」

「そう、かな…?」


そうさ


「もちろん、用途によって使い分けできますが…
あなたは、皆に愛される方ですから」


別に褒めてる訳でも
自分を卑下してる訳でもないが


「あなたは、友達も多くて
クラスでも人気者ですよ」

率直な感想である


「だてに、同じクラスではありません
僕はちゃんと、知ってますよ」


「ほんと?」

「ええ。あなたは、僕とは違います。
自信と誇りのある人間です」


「…秋山くんは?違うの?」


僕は…

「つまらない男ですから」


……くだらない話をしてしまった


「買い物に行ってきますね」


「…待って!」と腕を捕まれた



「……あたし、パソコンの使い方覚えたよ?
貸出しできるよ?」

「……そう、ですね…」


そうだった。この子は一日で使い方を覚えた


「もっと色んなこと、出来るようにするよ」

…………

「だから、教えてね?」

「……ええ」



何か得体の知れない物体が体の中に入り込んだ気がした


まるで、今朝飲んだばかりのカプセルの薬が
再び体に入ったような


体に入ったカプセルはジワリ、ジワリと溶けていく


溶けたとき、僕の体はどうなっている?



「買い物、あたしも一緒に行く」

「ええ」


しかし

彼女が僕に飲ませた
カプセルの中身は知るよしもない





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