眼鏡男子の脳内デフラグ
――
「あ~もう、委員なんていやだよー」
「いい加減に諦めたらどうですか」
「嫌なものは嫌だもん」
…まあ、分かりますけど
「忙しいのかなあ?」
「ですね」
「…どのくらいで終わるかな?」
「文化祭が終わるまでですから…約1か月ですね」
「やだー」
「学級委員の方に交渉してみたらどうです?」
「……怖いんだもん」
なるほど。怒られる=怖いなのか
「言えないのなら、仕方ありませんね」
「だって、委員になったら図書室来れなくなっちゃうよ?」
あ……そう、か
「図書室、来たいよ」
「…………」
………こんな時は何と言えばいいのか
いつもなら、
深く考えなくても口から出てくる言葉たちが
今は出てこない
「…ごめんね。愚痴だよね」
「………」
僕の脳は
混乱しているのか、
麻痺しているのか、
停止しているのか
なぜ、言葉が出てこない?
探しているのか?
無理ですよ
どんなに探しても
ファイルを端から開いても
見つかるわけがありません
だって、こんな経験がありません
「委員がない時は来るからね?」
…………
「いいよね?」
「………ええ」
彼女はいつも
僕の知らない言葉を知っている
どんなに本を読んでも
どんなに検索しても
出てこない言葉たちを
彼女は知っている
僕の知っている言葉は
所詮、紙の上だけの薄っぺらいもの
彼女の言葉は人を動かす力がある
だから、ひどく羨ましくなってしまう
その一方で救われてもいるのも事実