眼鏡男子の脳内デフラグ
「松井さん」
「ん?」
「お願いがあるんですけどいいですか?」
「なに?」
…………………
「左手をお借りしてもいいですか?」
「?はい」
目の前に彼女の左手を
両手で握れば温くて
「……あき、やまくん、どしたの?」
「パワーを貰ってます」
「…でも、元気ない、よね?」
「……そんな風に見えますか?」
「…うん」
そうか
「すみません」
「………なんで謝るの?」
「言わせてください」
“ありがとう”も“すみません”も
言わせてください
言わないと
僕は
言わなければ
僕は
他に自分を保つ術を知らないから
そうやって生きてきたから