眼鏡男子の脳内デフラグ
しなきゃ
デフラグしなきゃ
ーーーいけないのに
「松井さん………なにか、あったんですか?」
それだけ、言った
ファイルから取り出した言葉ではない
考え抜いた言葉でもない
ただ、口から出た。無意識に
この焦燥感はなんなんだ
「……ほら、やっぱり見てないじゃない」
「見てますよ?」
“心に眼鏡をかけるべき”
「見てない!!」
「……なぜ、泣くのですか?」
彼女は突然立ち上がり、背を向けた
「ごめん、頭冷やしてくるね」と、一歩踏み出したので
慌てて腕を掴もうとしたけれど
間に合わずに、腕はすり抜けていった
「待ってください!」と自分も席を立ちあがって
彼女に近づこうと足を動かしたけれど
「……来ないで………ごめんね、すぐに戻るから、今は来ないで」
駄目だ。きっと今、この瞬間だけは行かせてはならない
警告音はずっと鳴り響いていて
本能がそう、言っている
ーー行かせるな、と