眼鏡男子の脳内デフラグ
同期
いつもよりも少し速く歩く
本当は走りたい
気持ちだけが先行する
彼女が持っていて、僕が持っていないモノ
扉に手をかけたら簡単に開いた
中に入って内鍵をかけた
この場所を逃したら捕まえられない
僕が持っていないモノ
―それは図書室の鍵
彼女はカウンターに座って、顔を伏せていた
ゆっくりと近づいて、隣に座った
こんな時なのに
二人でカウンターにいるのは
久しぶりだな、なんて呑気な事を思った
いつだったか、彼女がしてくれたように
何も言わずに手を握った
顔は伏せたままだけれど
わずかに指が動いた
彼女がなぜ、あのような行動にでたのか
聞きたいけれど
聞けるはずもなく
言葉を飲み込んだ
手をつないで“同期した?”と
いつだったか僕に聞きましたね?
いま、この手から同期できたら