図書室で愛をささやく
「えっと、あの、どちらさまで?」
違う。
彼の質問にまったく答えられていない。
これじゃ駄目だって分かっているのに、すっかりテンパってしまった。
彼は少し目を見開いたあと、またクスリと笑う。
「そうだな、自己紹介ね。俺は篠宮雪斗、2年だ。」
君は?
そう続けた彼の耳元に何か光るものを見つけた。
なんだろう。
「北山悠香です、同級の。」
「同い年って分かってんのに、なんで敬語なんだよ。」
何が面白いのか、彼の口角は上がったまま。
「すみません、半分くらい癖なんです。」
「へぇ。クセ、ねぇ。」
ぐいっと身を乗り出されて、思わずのけぞってしまう。