元カレ。【短編】
新しいはじまり
コンビニのドアが開いた。入ってきた男は警官のようで、両手を宙に上げていた。
「警察だ。武器は持っていない。人質は無事か?」
香奈は思わず靖史の背中に隠れ、しがみつく。
靖史の鼓動が早くなっているのが聞こえた。
靖史は大きくため息をつくと、
「…無事です。」
低い声ではっきりと答えた。
「ここは包囲されている、おとなしく…」
「逆らう気はありません。」
警官の言葉を遮って、靖史は続ける。
「自首します。」
立ち上がる靖史を、香奈は思わず引きとめた。
「やっちゃん…」
靖史は優しくふりほどくと、小声で囁いた。
「おとなしくしてろよ。共犯だとか思われるぞ?」
香奈は首をふる。
どうしたいのかは解らない。自首するのが靖史にとって一番良いのは解っている。
だけど靖史を見捨てるような、離してはいけないような気がしていた。
悲痛な表情の香奈に、靖史は緊張しているのを抑えて、できるだけ優しく笑ってみせた。
「香奈、幸せになれよ。」
そして香奈に背を向けると、警官の方へ歩いていく。
香奈は涙をこぼしながら、靖史の背中を見送る。
靖史は馬鹿だ。こんな時にまでかっこつけたがって。
何か言ってやりたかったけれど、声にならなかった。
「警察だ。武器は持っていない。人質は無事か?」
香奈は思わず靖史の背中に隠れ、しがみつく。
靖史の鼓動が早くなっているのが聞こえた。
靖史は大きくため息をつくと、
「…無事です。」
低い声ではっきりと答えた。
「ここは包囲されている、おとなしく…」
「逆らう気はありません。」
警官の言葉を遮って、靖史は続ける。
「自首します。」
立ち上がる靖史を、香奈は思わず引きとめた。
「やっちゃん…」
靖史は優しくふりほどくと、小声で囁いた。
「おとなしくしてろよ。共犯だとか思われるぞ?」
香奈は首をふる。
どうしたいのかは解らない。自首するのが靖史にとって一番良いのは解っている。
だけど靖史を見捨てるような、離してはいけないような気がしていた。
悲痛な表情の香奈に、靖史は緊張しているのを抑えて、できるだけ優しく笑ってみせた。
「香奈、幸せになれよ。」
そして香奈に背を向けると、警官の方へ歩いていく。
香奈は涙をこぼしながら、靖史の背中を見送る。
靖史は馬鹿だ。こんな時にまでかっこつけたがって。
何か言ってやりたかったけれど、声にならなかった。