元カレ。【短編】

意外性のコンビニ

香奈はコンビニに行こうと外に出た。

夏の夜は涼しくて、誰かと過ごしたいつかの夏を思い出させた。
月は半分に欠けていて、香奈は寂しいと思った。
ぽっかり空いた喪失感の穴から、いつかの夏の夜、一緒に歩いた人を、幸せだったひとときを垣間見る。

男と別れた夜は心細くて寂しくて、けれど会いたい人にはもう会えないと言われたばかりで…その隙間でふと、昔の男との幸せだった瞬間なんかを思い出したりすると、妙なことに無性に会いたくなったりするもので。
会ってどうしたいわけでもないのにそんなことを思う自分に、香奈は自嘲気味にひとり笑った。妙な思考回路であることくらいは、ぼんやりした頭でも自覚していた。

「この女、寂しさのあまり、相当キテるな。」

なんて人ごとのように考える。


誰でもいいわけじゃい、会いたいのは雅人ひとり。だけど会えないなら、せめて…

香奈は自分の中に突如湧き出てきた感情に混乱しながら、コンビニの中に足を踏み入れた。
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