エージェント Ⅱ
ここから地元まで、特急を使えばそんなに時間はかからない。
気晴らしにお買い物でもしようか。
お金ならたくさんある。
…そんなことを思い浮かんだけど、その気になんてなれるわけない。
「ねぇ、君。今ヒマ?」
「えっ、」
「ちょっと付き合ってよ」
「え、いや、」
明らかにナンパ。
いくつものピアスに、揺れる金髪、チャラそうな男。
「やめてくださいっ…!」
腕を掴まれ、その腕を離そうとして、大声を出した。
さすがに人混みの多い街。
物珍しそうに人の目がこっちに向く。
「チッ」
明らかに嫌そうな顔になったので、あたしはとにかくその場から逃げる。
とにかく必死だった。