エージェント Ⅱ
「男の人に、声かけられて…。思わず逃げました…」
「知ってる。あたしの前で嘘つくんじゃないわよ」
やっぱり見てたんだ…。
ということは、この人はあたしをここまで追ってきたのだろうか?
「あんた、ここどこかわかる?」
「え、」
「この辺りには来ない方がいいわよ、特に夜はね」
「はぁ…」
「まあ、昼間っから暴れてる奴は山ほどいるけど」
「え、」
女の人がそういうと、近くでガシャンと物が倒れた音と、男の人の怒鳴り声が響く。
「絶対知らずにこっちに走ってきたんだろうけど、あんたも運悪いわね。珍しく昼間っから喧嘩してる奴に遭遇するなんて」
「ええ!?」
「巻き込まれたくないなら、この辺りから逃げて」
「でも、来た道が…」
左右を見ずに走ったせいで、ここがどこだかわからない。
迷子だ。